平成22年度の研究成果

 本研究課題の初年度にあたる平成22年度は、研究分担者・連携研究者による各々の対象地域の複合的国家編成に関する調査、それらの成果を比較検討する研究会(平成22年5月22日於大阪、同年12月26日於大阪)、国内の近世ヨーロッパ史研究者を招き本研究の方向性を問うワークショップ(平成23年3月13日於京都)を実施しました。

 本研究は、従来地域別に検討されてきた東・西・南・北ヨーロッパ各々の近世的国家編成に関して比較を進める点に最大の特色がありますが、本年度に開催された研究会やワークショップを通じて、複合的国家編成の制度的側面と理念的側面に比較検討の焦点を置きながら、各々の地域における事例が提示されました。そうした作業によって、(1)従来、各国の歴史学研究者が各地域に固有の事例に依拠しつつ導出した「複合王朝」や「礫岩国家」といった複合的国家編成を扱う方法概念は、各地の政治・社会・文化的状況の差によって意味することが異なるため、近世ヨーロッパに広く見られた現象としての「複合的国家編成」という語彙と峻別して次年度以降の比較検討を進めねばならないこと、(2)近代的国民国家史観の相対化後の地平に立った歴史学研究に求められる課題として、各々の地域事情に応じてその内実が異なる国家編成を包括し、近世ヨーロッパに普遍的な国家形態として「複合的国家編成」を総括する方法概念を本研究は提示できるかなど、比較研究を進める上で研究者間に共有されるべき課題が明らかにされました。

 従来、地域別に検討されてきた近世的国家編成の問題に関して、研究分担者・連携研究者の間で共有されるべき方法論的課題が明らかにされた点は、本研究を単に個別研究の集積として進めるのではなく、個々の研究が有機的連関をもつ共同研究として進める上で、次年度以降の指針となるべき成果となったと言えます。

【平成22年度の研究成果(雑誌論文・学会発表・図書に限る)】
【雑誌論文】
  1. 小山哲,「「貴族の共和国」とウクライナ―植民地的共和主義をめぐる覚え書」,篠原琢編『ヨーロッパ東部境界地域の共有遺産研究Ⅰガリツィア』(東京外国語大学),2011年,87−116頁.
  2. 近藤和彦,「聖俗の結合」,吉田伸之・伊藤毅(編)『伝統都市』第4巻(東京大学出版会),2010年,43−71頁.
  3. Hirotaka Tateishi, "«El Ebusitano»: el primer periòdic d’Eivissa en els fons d’una biblioteca americana", Revista Digital d’Història: historica.cat (Institut d’Estudis Eivissencs), 2011, pp.48-55.
  4. Hirotaka Tateishi, "«El Ebusitano»: el primer periódico de Ibiza en los fondos de una biblioteca americana", Mediterranean World, pp.97-109.
  5. 中本香,「17~18世紀中葉におけるスペイン王国の構造と政治的集合概念について」,『Estudios Hispánicos』,vol.35, 2011年,45−68頁.
  6. 古谷大輔,「カルマル連合解体期のスカンディナヴィア世界における近世王国像について」,『IDUN—北欧研究—』,19号,221-234頁.

【学会発表】
  1. Hirotaka Tateishi, "The Contemporary History of Ibiza and ses Salines (Salt Evaporation Ponds)", Mediterranean Studies Group at Hitotsubashi University Workshop 2010 - Trieste (Italy), 2010年9月2日,トリエステ大学(イタリア).
  2. 中澤達哉,「リプライ:書評(池田嘉郎)中澤達哉著『近代スロヴァキア国民形成思想史研究―「歴史なき民」の近代国民法人説―』(刀水書房、2009年)」,東欧史研究会2009年度第2回例会,2010年4月17日,世界史研究所.
  3. 中澤達哉,「南スロヴァキアにおける高等教育のグローバル化と共生の諸形態」,トヨタ財団2010年度研究助成研究会,2010年12月10日,早稲田大学.
  4. 古谷大輔,「近世ヨーロッパにおける礫岩国家研究のためのプロレゴメナ」,「近世ヨーロッパ周縁世界における複合的国家編成の比較研究」拡大ワークショップ,2011年3月13日,京都大学.

【図書】
  1. 近藤和彦(編),『イギリス史研究入門』,山川出版社,2010年,全412頁.
  2. Kazuhiko Kondo & Miles Taylor (eds), British history 1600-2000: expansion in perspective, Institute of Historical Research, London, 292p.
  3. 立石博高(共著),山本紀夫編,『トウガラシ讃歌』,八坂書房,2010年,全294頁.