近世ヨーロッパ周縁世界における複合的国家編成の比較研究(平成22〜24年度科研基盤(B))

 平成22〜24年度にかけて科研基盤(B)の助成を得て推進された「近世ヨーロッパ周縁世界における複合的国家編成の比較研究」は、イベリア半島、ブリテン諸島、中央ヨーロッパ、バルト海沿岸地域など、近世ヨーロッパの周縁世界にみられた複合的国家編成の実態を、(1)資源動員にからむ国家組織のあり方、(2)地域社会に保たれた価値・規範との関係においた支配の正統性のあり方、(3)国家 活動への地域住民の参画のあり方の三点を比較基準として分析し、近世ヨーロッパ世界の実態に即した国家編成を総合的に提示しようとして推進されました。

 本研究は、「一定のひろがりをもつ集団・共同体が政治的な磁力のはらたく場でおびる磁気的編成を可変させる一定の情況」(近藤和彦)に着目しながら、イベリア半島、ブリテン諸島、中央ヨーロッパ、バルト海沿岸地域などに見られた複合的国家編成の具体像を比較検討しました。これらの地域が対象とされた背景は、複合的国家編成の可変モメントを提供する「磁場」が、戦争や内乱といった非常事態の相次いたこれらの「ヨーロッパ周縁」の地域で可視化しやすいためです。これらの地域を対象とする知見を有機的に結合させることで、本研究は、近世ヨーロッパの国家編成が有していた普遍的特徴の一つを、「服属地域の来歴や固有の秩序観、統治権力との交渉チャンネルなどの違いによって、同君であっても統治権力と服属地域との接続関係に多様性と可塑性をもつ」点にあると整理しました。

 本研究から得られた知見は、2013年5月12日に開催された日本西洋史学会第63回大会小シンポジウム「近世ヨーロッパにおける礫岩国家 ―複合する政体、集塊する地域―」において公開されました。とりわけこの小シンポジウムでは、近世ヨーロッパの国家編成が有していた普遍的特徴である「一定の情況で生み出される磁場に応じて可変するポリテイア」を「礫岩政体/礫岩国家」の名辞でもって紹介しました。本研究で得られた「礫岩政体/礫岩国家」の形成・変質・解体のモメントを時代や地域をめぐるコンテクストの変化に対応した秩序理念の組替にみて、中世から近代へと至る通時的な国家編成の可塑性を検討すべく、2013年度より歴史的ヨーロッパにおける複合政体のダイナミズムに関する国際比較研究が推進されています。